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お待たせしました。
例の続きを今日は書こうと思います。
ストーリーものなので、興味ない方は読み飛ばしてくださいね。

 

1ヶ月ぶりの乗務、成田⇒マニラ線で起きた事件。

「ちょっと!松尾さん。あなたの担当通路のお客様がコメントカードを書いているわよ。
ミールの提供漏れとかあったんじゃないの。ちょっと様子見に行ってちょうだい」
「も・・・申し訳ございません」
「たくもう、満席でただでさえ忙しいのに・・・」

先輩は吐き捨てるようにつぶやくとトレーを持って
再びキャビンに出て食後のコーヒーをサービスして回った。
担当旅客が何か手紙のようなものを買いている。
意を決してその旅客の元へ向かった。
「あ、あの・・・。私はさきほどお食事をサービスさせて
頂きました松尾と申します。何か不手際などございましたでしょうか・・・」

怒られるのを覚悟で肩を硬直させていた。
旅客は筆を止め、知枝の顔を見た。

「いやぁ、松尾さんて言うのかね。
あなたのサービスはマニュアルだけに囚われない。
真心がこもっていて実に気持ちよくサービスを
受けることが出来た。っていう内容を今書いていたところんなんです」

パァッと顔がほころんだ。
「ほ、本当ですか、有難うございます」
飛び上がりたい気持ちを抑え、深々とお辞儀をした。

もうどうせ辞めちゃうんだし……。
そう思っていても、心の奥底では好きで好きでたまらなかったのだ。
この仕事が。

お客様にも、それが伝わったのかもしれない。

約一か月後。
私は客室本部長賞を受賞した。
皆に拍手される中で賞状を受け取った。
忘れかけていた仕事への野心が燃え上ってくるのを感じた。
夜、寝る前に日記を開いて
もう一人の自分と対話した。

どうするの?逃げるの?
せっかく掴んだCAの夢、中途半端で投げ出してしまうの?
今までだっても、投げ出さずにやって来たじゃない。
もう一人の自分は容赦なくツッコミを入れてくる。

確かにそうかもしれない。
あの頃の私に比べれば、はるかに恵まれている。
いつだって、道なき道を切り開いてきた。
でも今は仕事への自信のなさから結婚へ逃げ込もうといている。

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「本当にいいんですか?」
美容師は心配そうに鏡越しの私の顔を覗きこんだ。
「いいんです。バッサリ短くしちゃって下さい」
キャリアか結婚か・・・。
もう迷いはなかった。

昨晩の電話のやり取りを思い出していた―。
「ごめん・・・。やっぱりファーストクラスを経験するまでは辞められない。
せっかくここまで来たから、もっと上を目指してみたいと思う」
「だったら僕、東京のどこか勤務できるところ見つけるよ」
彼は、実家を継がずに東京で働き口を探すと申し出てくれた。
「私のために、あなたの可能性を潰して欲しくない。
結婚するためにどちらかが何かを犠牲にするのはフェアじゃないと思う」

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「どうですか?」
美容師さんに椅子をくるりと反対側に向けられ、
鏡越しに様変わりした自分の姿を見た。
私はニコリと頷いた。

ウジウジどっちつかずで悩んでいた私、さようなら・・・。

「最近、一皮むけたんじゃない」
フライト後、直属の上司に褒められた。

「いえいえ、髪切ったせいですよ、きっと」
真っ先に謙遜して見せたが、内心では悪い気はしなかった。

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いかがでしたか。
お読みいただき、有難うございました。

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詳しくはこちらに載っています。
興味ある方はご覧くださいませ。

有難うございました。